
聖マリアンナ医科大学小児外科が主催の胎児治療講演会に参加するため診療の後に大学に行きました。非常に珍しい生まれる前から診断することができる脊髄髄膜瘤に対する胎児治療のお話しでした。
胎児治療は、妊娠中に判明した赤ちゃんの病気、特に生まれてからでは治療成績や生存が難しい病気、を臍の緒が繋がっているうち、すなわち妊娠中に行われる治療です。日本では、横隔膜ヘルニアや体重差のある双子の病気、胎児の胸水などの治療が特定の医療機関で行われています。
脊髄髄膜瘤は生まれつき下半身の動きや機能が障害される可能性が高い病気です。ドイツなどでは10年前からこの疾患の胎児治療が行われていて、障害なく生まれてくる子は40%を超えているそうです。残念ながら日本は10年世界より遅れているのです。
今回講演してくださった昭和大学横浜市北部病院の市塚先生は、私が大学病院で周産期センターいた頃からいろいろご相談させて頂いたことのある周産期の専門の先生です。またもう1人講演頂いた瀬尾先生は、聖マリアンナ医科大学出身で昭和大学に就職した大学の後輩です。彼が学生の頃からの知り合いで、学会などでもちょくちょく声かけさせてもらったり、昭和大学での活躍もよく聞いていました。
今回、その瀬尾先生がドイツに留学し、ドイツで行われている脊髄髄膜瘤の治療の免許皆伝を授かって日本に帰ってきた!そして昭和大学横浜市北部病院、聖マリアンナ医科大学で連携してこの治療を日本でもはじめようぜ!っていう講演でした。もちろん、産婦人科、小児外科、手術中に管理する麻酔科だけでなく、産後のケアに脳神経外科、小児科とたくさんの診療科、たくさんの病院が地域隔てることなく協力が必要な壮大なプロジェクトです。
しかし、私も日々感じておりますが、始めなければ始まらない、一方踏み出さなこれば進まないです。昭和大学横浜市北部病院の先生方が、聖マリアンナ医科大学病院をパートナーの1人に選んでくださったことを常勤の医師ではありませんが、嬉しいですし誇らしいです。あの日、あの場所から始まった時に私もいたんだ!と言えるように、できることがあれば協力を惜しまない所存です。
今から20年前くらいでしょうか、大学院生の頃に和歌山の実験室で、日本で初めてサルの卵巣を凍結保存して、融解、移植して蘇らせることに私が所存していた研究チームが成功し、その成果が私の博士論文となりました。あれから20年、今や日本中で乳がん治療中の方や小児がんのお子さんの卵巣凍結保存が行われています。継続は力なり、私は身をもって経験しています。今度は昭和大学と聖マリアンナ医科大学が力を合わせて日本の胎児治療が進んでいくことを期待しています。では皆様、お元気でお過ごしください。