皆様こんにちは。私たちのクリニックは先日、財団法人Nightingale(ナイチンゲールと読みます)、を設立いたしました。この財団法人の設立は、私が自身のクリニックを開院するよりずっと前、およそ今から14年前くらいからの夢であり目標でありました。
私はもともと、聖マリアンナ医科大学病院の産婦人科で、産科の副部長や婦人科の副部長として働いておりました。総合周産期センターでの勤務では、通常の妊婦健診や分娩に立ち会う仕事ともに、様々な家庭の事情をお持ちの妊婦さんの妊娠中の対応や産後の生活への支援を行ってまいりました。
生まれて間もなくから乳児院で生活しなければならないお子さんも少なくなく、どの乳児院も満杯で空きができるまで病院でお預かりするようなこともありました。乳児院から児童養護施設へ。児童養護施設では18歳を迎えると施設を出ていかなければなりません。金銭的な自立は困難であり、自分のしたいことよりも生きていくことを優先しなければならず、仕事の選択肢が非常に少ないと伺っております。
一方で私は、女性医学、すなわち更年期障害や月経異常に関する専門医師でもあります。様々な理由で通常よりも早く閉経を迎えた方へのホルモン補充療法やそのほかの治療を行う診療部門の責任者を仰せつかっておりました。子供を持ちたいけれども、そのような理由からなかなか妊娠が難しく、つらい思いをなさっている患者さんが多くいらっしゃいます。
このような2つの部門に関わっておりましたので、乳児院には入った赤ちゃんとなかなか妊娠することが難しい患者さんとで里親制度を推進できないものかと思い、およそ10年間自分なりに活動をしてまいりました。しかし、残念ながらなかなかうまくいきません。そうこうしているうちに10年経ってしまったのです。
私は考えました。そしてこのような結論に辿り着きました。私が私のできることをしようと。財団法人Nightingaleは、近隣の児童養護施設の希望者で聖マリアンナ医科大学看護学校に合格したならば3年間の学費と生活費を支給・支援します。そして看護師の資格を取得することで自立した生活を送りさらに本当の自分の夢を掴んでもらう、ことを目標とする団体です。Nightingaleから学生たちに支給・援助される学費や生活費は、五十嵐レディースクリニックを受診していただいた患者さんの診察料の一部を充てさせて頂きます。皆様から頂いた診察料の一部を学生の学費や生活資金に充てさせていただくことから、皆様にも私たちと一緒に若者の夢をかなえる手伝いをしているのだと、気持ちを共有して頂けたら非常にうれしいく思います。
一般財団法人Nightingaleの名前の由来はいくつかあります。一つは有名な「クリミアの天使」世界で一番有名な看護師さん。二つ目は、アンデルセン童話に出てくる病を治す、偽物ではない本物の鳥です。そして三つ目は赤い彗星の専用機です(笑)。
今後の予定として、近日中に以前から連絡している川崎市の職員さんに財団法人の設立を報告し、看護師になることを希望する方が今年はいらっしゃるのかなど詳しいお話を進めてまいります。最初は、1年に一人あるいは一人卒業させるのにいっぱいいっぱいかもしれません。ですが、始めなければ何も変わらないと思っています。
お母さんと離れて暮らさなければならない赤ちゃんを、お母さんをたくさん見送ってきました。あの時私は何もできなかった。何もしてあげられなかった。今回の活動にあたって、五十嵐にとってなんかメリットあるのか?という質問を何人かから受けました。でも、そういう問題じゃないんです。理屈じゃないんです。
泣きながら赤ちゃんを市の職員さんにお渡しして、去っていく赤ちゃんを見送るお母さんの背中を覚えている。ごめんね。14年もかかちゃった。でもね、ここからだよ。どうか、まだ出会っていない、もしかしたら赤ちゃんの時に会っていたかもしれない君たちの夢に、未来に間に合いますように・・・。
皆さまと一緒に一人でも多くの若者の夢を追いかける手伝いがしたいです。何かを成し遂げたいという信念は、持ち続ければ必ず形になると信じております。私たちの活動はまだまだ小さいかもしません。でも、少しずつ広がってくれたら大きな活動につながると思います。一燈照隅万燈照国。これからも五十嵐レディースクリニックと産声をあげた一般財団法人Nightingaleをよろしくお願いいたします。では皆様、お元気でお過ごしください。